大豆の若葉

「 養之如春 」 (之れを養ふこと 春の如し)

文化 と 風土 によって ゆっくりと 涵養される私たち

養之如春(春の書斎)

立春を過ぎて 大地の下で 草花がゆっくりと動き初める頃
いつも想ひ起しては開く 書があります


涵之如海 養之如春(會津八一)

涵 之 如 海 ( 之れを涵すこと 海の如し )
養 之 如 春 ( 之れを養ふこと 春の如し )

秋艸道人 會津八一 書

私の敬愛する會津八一は 学問を通して若い人格の育成に尽力した人でした
書物や先哲より得た識見が その人格となって息づくまでには
日々新たな気持ちで 自らを愛し 養ふことの必要を教えて呉れます

彼の格調高き書風には 常にその意が的確に表はされてゐます
新しくて 古へに近しい「高古神韻」の姿


文選_漢書(班固)答賓戯


涵養(答賓戯)涵之如海 養之如春

原典は 後漢の班固が編纂した「漢書」巻一の「答賓戯」

班固は名文家でもありました
詩人 文人の必読書であった
「文選」にも 多く採録されてをります

原文では 漢を讃える四句の後半の聯であることが解かります
  ( 蔵書「文選」より )


會津八一(南京餘唱と自註鹿鳴集)

會津八一は 書作の厳しさとともに 大和古寺の逍遥の悦しさもまた 示して呉れました


南京餘唱(會津八一)

「南京餘唱」の
みよしのの歌

写生帖を手に
西行 「山家集」の
風景を求めて
四季折々に美しい
吉野の山道を拾ったこと
風の色とともに想ひ返されます


夏の夕下がり 宮滝の涼しげな水瀬
常滑の石を持ち帰り 書斎の文鎮にしてをります
あの日の 緑陰の濃さ そして 川の冷たさ


自註鹿鳴集(會津八一)

南京新唱(「自註鹿鳴集」より)の頁を開けば 今 私は南京奈良の路傍に居るやうです
仮名だけで ひと息に詠はれる 八一のことばには いつまでも色褪せない息遣ひが映ります
入江泰吉の初期 モノクローム写真のやうに
それは あふれ出づる情感でせうか



ゆば長