王朝古制の優雅を伝える空間を散策しました。
今年も春の一般拝観の期間となりました。
京都御苑の中の桜の木々も、一斉に咲き初めております。
京都御所の近隣に父祖の代から暮らしておりますが、子供の頃からの遊び場所として、友達とも「御所であそぼ」と言っては親しんでまいりました。
近すぎて一般拝観にもめったに行きませんでしたが、年齢とともに楽しみにするようになりました。
そんな、今年の拝観の様子を 写真にまとめております。
宜秋門より入ってすぐの、御車寄(みくるまよせ)は唐破風造りの屋根。
諸大夫の間の屋根の破風。
近世の風を感じる爽快な形。
白壁と白砂に映える、丹塗り(にぬり)の円柱の鮮やかな彩り。
西の月華門より、回廊を見渡します。南庭の向うに 東の日華門が見えます。
この南庭もまた、大切な儀礼の空間。
儀式の為の広場という、「ニワ」の最も古い姿をとどめています。
南の承明門より、紫宸殿を臨みます。いつ見ても、まず、屋根の形とその大きさに目を見張ります。
これだけの大きさが、檜皮葺きであるからこそ、威風であるはずの空間に清明さを感じます。
斬新なモダンデザインとも言えないでしょうか。
この屋根の形は、何度となく建替えの後、江戸末期の寛政度御造営の後とのこと。
現在よりも更に低い方が、おおらかな王朝時代の平安朝古制に近いと聞きます。
有名な「紫宸殿」の額。
はじめ、弘仁9年(818年)には
空海(弘法大師)揮毫の書
現在は岡本保孝の書。
清涼殿の蔀戸(しとみど)の御格子(みこうし)。
春曙抄には平安期の清涼殿が登場します。
陣の座~軒廊(こんろう)の屋根組み
陣の座の前から南庭の東の回廊は、明るくて。
今にも、往時の左近衛府の武官が通りそう。
小御所の屋根の優美さ。
小御所には、王朝様式と近世の見事な融合を感じます。
小御所の御池庭の州浜(すはま)から。
広々と一望できる池は東に面していて、満月の夜の舟遊びの優雅を想います。
蓬莱山に見立てた島が対岸に作庭されています。
手前の小御所から、蹴鞠の庭を挟んで、御学問所の屋根。
小御所に対する御学問所は、書院造りの様式が随所に見られる、近世風の佇まい。
横の直線が印象的な
長押門(なげしもん)を入ると
ここからは御常御殿(おつねごてん)。
プライベートな空間に
足を踏み入れたことを感じます。
この東庭も散策しては
近くで鑑賞すべき庭。
孝明天皇のお好みの造作といわれる庭には、曲水の宴を催す流れがあります。
その流れの先には地震殿と呼ばれる、泉殿が見えます。
この汀に裾を寄せて歌を詠んだ大臣たちは
俗世を離れて王朝時代の夢に、ひと時を過ごしたことでしょう。
三々五々にゆく
拝観の方々にも
王朝時代の悠かな風がわたります。
清所門手前の白塀に
松の影が映っています。
何ということもなく
ゆっくりと歩いてゆきたくなる
悠か大宮人の夢に満ちた
春の夕空。
ゆば長つれづれ手帖
「今日の京都は歴史絵巻」も 併せてをご覧ください。
京都御所を出発する時代祭に、王朝世界が広がります。